女性のからだの悩み #2ピルとビタミンC
2022年10月13日更新
SUMMARY
- ・ピルとは?
・ピルの副作用
・ピルとビタミンCの併用にまつわる噂
前回の記事では女性ホルモンについてまとめました。
その中で「ホルモンバランスの乱れのケア」のために、①ストレスケア ②十分な睡眠 ③疲労回復 ④ピルという4つの対策をご紹介しました。
今回は、ピルに焦点をしぼり、「ピルとビタミンC」の関係について重点的にお伝えしてまいります。
ピルとは?
ピルとは本来は英語で丸薬のことを指しますが、一般的には、合成された「エストロゲン 」と「プロゲステロン 」という2つの女性ホルモンを含む経口避妊薬 のことを「ピル」と呼んでいます。
ピルを服用すると、脳下垂体は「妊娠した状態である」と錯覚し、卵巣からエストロゲンやプロゲステロンを分泌しなくてもよいと判断します。
その結果、脳から分泌される卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンが減少するため、卵胞は発育せず、卵巣は排卵する必要が無くなり、休眠した状態になります。
これにより、避妊することができます。
ピルには避妊効果以外にも以下のような作用があることが知られています。
①生理痛の緩和、生理周期の安定
②生理前のPMS(月経前症候群)の緩和
③ホルモンバランスを整え、肌荒れやニキビを軽減
④子宮体がん、卵巣がんの予防
⑤子宮内膜症 の治療
⑥乳房の良性腫瘍の発生を抑制
このように、女性特有の様々な症状に効果があるピルは世界で最も普及している薬のひとつです。
しかし、日本では欧米より約30年遅れた1999年になってようやく低用量ピルが認可され、欧米では50%~70%の女性が服用しているにも関わらず、日本ではいまだ1%~3%程度しか服用していないと言われています。
それは、日本では副作用の多い薬であるという誤解と偏見があり、また利点があまり正しく理解されていないということが関係しています。
ピルの副作用
ピルの副作用として以下の2つが言われています。
①悪心や吐き気、頭痛、だるさなど、つわりの軽い症状のようなものが飲み始めに起こる。
そもそもなぜ、ピルといえば現在では「低用量ピル」を表すのか?からご説明します。
昔の製品はホルモン含有量が数倍から数十倍もありましたが、時代を経てホルモン量を減らし、安全性を高める改良がされてきたからです。
現在の、いわゆる「低用量のピル」は、従来のような副作用は軽減され、ほとんど何も問題ないという方も多くなってきています。
②長期摂取でリスクが高まると言われている「血栓症」
頻度は低いものの、ピルの服用により、静脈血栓症等の血栓症を発症することがあると言われています。(日本産科婦人科学会によれば,海外の疫学調査では低用量ピル服用者の静脈血栓症発症のリスクは,年間1万人当たり3~9人(服用していない人は1~5人)と報告されています。)
(参考)
株式会社日本医事新報社「低用量ピルによる血栓症リスク」
副作用が起こりやすいか否かは、血栓症になりやすい体質かどうかにも関係する他、肥満・喫煙・手術・高齢・脱水・高血圧・糖尿病など 、リスクを高める生活習慣や、その他の要因もあると言われています。
ピルとビタミンCの併用にまつわる噂
ビタミンCなどのサプリメントを日常的に摂取する人が多い、サプリメント大国であるアメリカでは、ビタミンCとピルの併用が全く問題になっていません。
しかし、日本では、「ビタミンCはピルの副作用を強くする」という噂が広がっています。
その原因として考えられることを具体的にご紹介します。
噂の元となったのは、「ビタミンCはethinyl estradiol(卵胞ホルモン)の作用を強化する」という論文と思われます。
該当する論文の一部を引用します。(1981年英国メディカルジャーナル Briggs MH氏)
『低用量ピル(トリキラー、トリファジル、ノルデット)の服用者12人が、50mgまたは1,000mgのビタミンCサプリメントをピルと一緒に服用。そ
の結果、ピルユーザーが大量のビタミンCを摂取すると、低エストロゲンピルでも高エストロゲンピルと同じだけの強い作用が見られるようになることがわかった。』
その論文では、ビタミンCの摂取で「卵胞ホルモン」の代謝が遅くなり、結果としてピルの成分「卵胞ホルモン」の効果が強くなると記述されていました。
この論文がきっかけで、ビタミンCの摂取は卵胞ホルモンの作用を強化し、副作用を強くするという憶測が生まれ、誤解が広まったようです。
論文にはピルの作用は強化されるとありますが、副作用が強化されるという意味ではないことが、その作者の、別の論文では「ピルの服用によりビタミンCとビタミンB12 が減るため、不足分の積極的な摂取を推奨」していることがわかります。
(参考)
「経口避妊薬とは」(2020年11月25日 (日) 17:30 UTCの版)『コトバンク』
「経口避妊薬」(2020年11月25日 (日) 17:30 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』
栄養状態や体格などの影響受けて、現代の女性は初潮(初経)が早まり、閉経が遅くなり、また出産回数が減ったことなどから、生涯の中で約400回程度月経が増えているという話を耳にしました。
そのような時代、女性にとって、月経の期間にその辛さを軽減し、やりたいことができる良い状態でいられるかは大きなテーマであると感じます。
そう考えると、今後ピルはもっと近い存在になっていくのかも知れません。
ピルに関しては、女性同士でも話題にしにくい内容ですが、お知り合いでもし「ピルとビタミンCの関係」を心配されている方がいらっしゃいましたら、本マガジンをご紹介いただければ幸甚に存じます。
小松美保子
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